平成23年東北地方太平洋沖地震

パッチワーク展を見るため、筑波西武の立体駐車場内で空いている駐車スポットを探している最中に地震発生。
初めは智ちゃんが足をばたつかせていて車が揺れているのかと思った。
が、違った。もっと強い。そして長い。
両側に駐車してある車がパーキングブレーキがかかっているにもかかわらず、50センチくらい前後に動き、センターに止まっている私の車に迫ってくる。
ぶつかるのではないかと怖くなり、ハンドルを握る手、ブレーキを踏む足に力が入った。
「平常心、平常心」と以前柏秀樹さんのライディングスクールで習った時のことを思い出す。
ガシャガシャという大きな音にふと気づくと、すぐ目の前の頭上に非常灯がぶら下がっていた。
物凄い揺れ。
もしこれが落ちてきたらフロントガラスが割れて私はダメかも、という思いがよぎる。
あと1メートル前進できれば落下しても車の屋根の上になるだろうけれど、あまりの揺れの強さに怖くてブレーキを緩められない。


智ちゃんに声をかけながら収まるのをひたすら待ち、揺れがやんだところで屋外へ。
道路にハザードをつけて止まったら、再び強い余震。
電話もメールもつながらない。
しばらく様子を見ながら届くかわからないメールを送り、帰宅することにした。
途中道路の端に濁った水たまりができている箇所があった。
家に近づくにつれ、信号機がついていない。停電?


マンションの機械式駐車場は停止中。
余震が起こるとギシギシと音を立てて不気味だ。
スーパーの駐車場に止めさせてもらい、様子をうかがっていたら、また強い余震。
電信柱が倒れてこないか、不安、怖い。
このスーパーは営業できない状況になり、店員さんが外に避難していた。
しばらくしばらく車内で待機していたが、智ちゃんの「トイレ〜」という声で覚悟を決め、マンションに戻ることにした。


◆被害
・玄関ポーチ
 門扉の内側に立てかけていた園芸用支柱が倒れて門扉が開かない。
 どかして中に入ると、玄関脇に山積みしていた肥料5袋が動き、玄関のドアをふさいでいた。
・リビング
 本棚は突っ張り棒で支えていたため倒れていないが、中の本は全て飛び出していた。
 本棚の上にのせていた物も落下。
 義父の紙位牌、母の遺影が落下。本の下から探し出すと智ちゃんが大事そうに胸に抱えていた。
 パソコンラックからプリンターが落下、パーツが外れて転がっている。
 電話機も落下、不通。
 金魚の水槽の水が3分の1ほど溢れて辺りをびしょ濡れにしていた。
 私のノートパソコンもこの水を大量にかぶって濡れていた。
 家族の写真立てや置物等が落下、破損。
・キッチン
 食器棚は二つとも地震対策をしていたため倒れなかった。
 耐震ラッチ付きの扉のおかげで食器棚の扉は閉じたままだが、その中で食器が幾つか割れていた。
 食器棚の上にあった物は落下。
 システムキッチンの引き出しは全開。上の吊戸棚は耐震ラッチ付き扉で閉じたまま。
・各居室
 本棚3つは倒れなかったが中のものはみんな飛び出して落下。
 洋服タンスが倒れて引き出しが外れ、部屋の入口を塞いでいた。
 スタンドミラーが倒れた。
・トイレ
 便器内に少しだけたまっている水が揺れで溢れていた。
ライフライン
 停電。断水。


◆避難
必ず強い余震が来る、NAKAJIとは連絡がついたが交通機関が軒並み運休で今夜は帰宅できそうにない。
智ちゃんを連れて避難所へ行ってみようか。
何度か余震でマンションの外へ避難したり中に入ったりを繰り返しながら、避難するための荷物を準備。
私も智ちゃんも、背中にリュックサックを背負い、ショルダーバッグを斜めにかけ、私は更にシュラフマグライトを持った。
避難所の小学校へ向かう頃には太陽は落ち、すっかり暗くなっていた。
何しろ停電中のため、世の中が本当に真っ暗。
明かりは車のヘッドライトのみ、信号機もついていない。
大通りを渡るのが怖い。
智ちゃんの手を引いて渡ろうとすると、車が察して譲ってくれた。
マグライトの明かりのみを頼りにようやく避難所へ到着すると、避難所だからと言って備蓄の水や食料、毛布や布団はなし、明かりも水もないとのこと。
体育館は開放してるが、だだっ広くて寒いだけなので、家に帰宅した方が良いと言われ、来た道を再びとぼとぼと戻る。
智ちゃんは重たい荷物を持ちながらも、抱っことせがんだりせず、よく自分の足で歩いてくれた。
しかも「おほしさま〜。おつきさま〜」と、停電できれいに輝く空を指さす。
こんなに小さな智ちゃんに勇気をもらう。
マンションに戻るとマグライトの乾電池が切れた、心も折れそうになった。


◆帰宅
マンション内の仲の良いお宅に声をかけ、安否を確認。
お互いに助け合おうと話し、少し心強く希望が持てた。
8時過ぎ、マグライトの明かりで智ちゃんと遅い晩御飯。
家の固定電話が使えず、ネット回線もダウン、頼みの綱は携帯電話のみ。
乾電池で使える充電器を探し出し、あらゆる単3電池を集める。
壁掛け時計から外し、キーボードから外し、智ちゃんのおもちゃからも外す。
洋服にダウンジャケットを着、靴下を履いたまま就寝。
ポケットにはマグライト、乾電池、枕元には充電器につながった携帯電話。
30分〜1時間ごと、緊急地震速報のアラームが鳴る。