手術

ついに朝が来た。気が重く起きあがりたくなかったが、9時の予約に間に合うよう、準備をした。


病院では、念のため超音波検査を再度した。
「何とか赤ちゃん映って。心拍確認できますように。」と祈ったがダメだった。
予定通り、手術をすることになった。
NAKAJIとお母さんには11時30分頃もう一度来てもらうことにし、病棟に案内された。
血圧、脈拍を測定した。血圧は上が99しかなく、脈拍は100もあった。緊張しているせいだろう。
肩に筋肉注射をされ、トイレを済ませて手術室に入るように言われた。


手術室内にある、カーテンで仕切られたベッドで手術着に着替え、手術台に載った。
片足ずつ太股まである袋をはかされ、両手両足を麻酔中に動かないようにと台に固定された。
金属のものは身につけてはいけないと、結婚指輪も外された。
右腕に血圧計、左手にセンサーをつけた。
全身麻酔を注射するため、右腕の血管の位置を確認し、照明の位置も調整された。


いよいよだと思うと、怖さとともに、せつなさがこみ上げてきた。
必死に涙をこらえた。
ベビちゃん、ごめんね。ちょっとの間バイバイだよ。
ベビちゃん、忘れ物を取りに行ってらっしゃい。取ったらまたすぐに戻ってくるんだよ。


まもなく先生が手術室に入って来た。
子宮の大きさと向きを確認するための触診。
その後、子宮口を広げられた。ギリギリっという感じの激痛。
あまりの痛さに、反射的に足を突っ張り体がのけぞった。
「逃げちゃダメ!もっとお尻を下げて!」と看護婦さんに押さえつけられた。
すぐに麻酔を注射し始め、看護婦さんに続いて数を数えるよう促された。
麻酔が効いたら手術される、赤ちゃんを取り出されると思ったら、意地でもしっかり数えてやろうという気になった。
1、2、・・・10。ほら10まで数えたぞ。よし20まで数えてやろう。
14、15、・・・
15を言った記憶はちゃんとある。16は言っていない。看護婦さんが16を言ったのも記憶にない。突然おちたんだろう。


何となく気がついたら病室のベッドの上だった。
気持ち悪くてちょっとだけ吐いた。
またすぐ眠った。


人の気配でうっすら目を開けた。看護婦さんだった。時間を聞くと、10時30分。
「ご主人様を呼びましょうか?そばにいてもらった方が安心でしょう」と言ってくれたので、自宅に電話してくれるようにお願いして、また眠った。


11時。NAKAJIとお母さんが来てくれた。NAKAJIが手を握ってくれた。
指輪がないことにすぐ気づき、バッグから出してまたはめてくれた。
そういえば昨年の昨日が結婚式だった。
手術中のことをゆっくり話しているうちに、少しずつ意識が戻ってきた。
麻酔中に戻して詰まらないようにと、昨日の21時以降、何も食べたり飲んだりしていなかったので、喉がからからだった。
お母さんがガーゼで口を湿らせてくれた。


11時30分頃。看護婦さんが来て血圧を測ってくれた。
立ち上がってふらつかなくなったので、待合室で診察を待つように言われた。
診察を受け、その後NAKAJIと一緒に先生から注意事項を聞く。
食事はOK。入浴はシャワーのみ。1週間後にまた診察をうけること。


12時頃帰宅。
抗生物質と子宮収縮・止血剤を処方された。
ひどく疲れた。